スウェーデンには、日本で深刻な問題になっている待機児童というものが存在しません。都市計画の段階で、住宅開発をするならば必ず近くに保育園や学校、病院などの施設を配置しなければならないことが定められているからです。集合住宅が駅、バス停などの近くに存在し、そこから歩いていける距離に複数の保育園があります。ベビーカーで送り迎えできる距離で、日本のように車で何十分もかけて送り迎えをする、とういケースはほとんどないといえるでしょう。また、集合住宅ではない一戸建ての家庭で、保育園が近くにない場合は、自宅で保育を担当してくれる人に任せるということも多いです。日本同様、公立と民間の保育園があります。子供一人に対しての予算が自治体によって配分され、それによって保育園経営がなされています。スウェーデンの保育園は、小規模なものが数多く存在するという形になります。しかし、保育園ごとの教育理念や哲学はしっかりと確立されていることが多く、保護者が安心して子供を預けられる環境といえるでしょう。また、どの保育園に通うかは、教育方針などをもとに各家庭で自由に決められます。保育園が多いとはいえ、待遇の悪さから保育士が不足するということはほとんどないと言われています。同一賃金同一労働という原則なので、保育士だけが特に賃金が安いということがないからです。もちろん、昇給などの制度はありますが保育士同士の賃金格差は生じにくくなっています。
上記のように、小規模な保育園が数多く存在するスウェーデンでは、独立した建物の保育園はもちろんのこと、集合住宅の中に保育園が設けられているということもあります。例えば、一階部分が保育園になっている集合住宅や、集合住宅の何戸分かの壁を取り払いフラットな状態にして保育環境を作っているということもあります。あえて賃貸の集合住宅の中に保育園を設けることで、需要が減ったときにも柔軟に対応できる仕組みが整えられていることがうかがえます。日本にもマンションの一階部分を利用した届け出保育園などが存在しますが、近隣の住民への騒音などが問題視されることもあります。スウェーデンでは、防音効果の高い、二重になったガラスなどを利用することであらかじめ対策がなされていることがほとんどです。
スウェーデンでは、母親だけでなく父親も育児休暇をとることが普通のこととして受け入れられています。育児休暇中には、自営業であっても手当てが支給されるので、休暇をとっても生活ができるようなシステムが構築されているのです。そのため、0歳児を保育園に預けるということはまずありません。また、子供が小学校6年生になるまで、保護者は勤務時間を短くできる権利が与えられているので、早めに仕事を終えて早めに保育園にお迎えに行くというケースがほとんどです。子をもつ親に対して、会社の受け入れ態勢が整っているので夜間保育の必要もないといえるでしょう。仕事をもつ母親の数は非常に多いですが、勤務時間を3割や5割に短縮して働いている人が少なくありません。保護者の働く環境が、十分に育児世代に配慮されたものだからこそ、子供、保護者の両方がある程度のゆとりを感じられるようになっているといえます。