最近テレビや新聞などでもよく見かけるようになった待機児童問題という言葉。この待機児童とは一体どのようなもので、何が問題視されているのでしょうか?現在の日本において、もはや社会問題にまでなっている待機児童問題を考えていきたいと思います。
近年、女性の社会進出に伴って、出産後でも両親共働きの世帯が増えています。まだ子供が小さいと仕事で家を空けている間は心配ですので、当然保育園などへの入園を検討することになります。しかし、保育園への入園を希望した人全員が入園を許可される訳では無く、事前に審査があるのです。この審査で落とされるということが近年頻発しており、入園出来ずに順番待ちの状態になっている状態を一般に待機児童問題と呼んでいます。
待機児童問題は1990年代のバブル崩壊と共に、共働きの世帯が急増したことに端を発し、待機児童の数は現在も年々増えています。この勢いはとどまるところを知らず、2017年も待機児童の数は増加するとの厚生労働省の発表がありました。
待機児童問題が起こる背景にはどのような原因が隠されているのでしょうか。共働きの世帯の増加も勿論原因の一つではありますが、それ以外にも核家族化の影響が顕著に表れていると言えるでしょう。核家族とは祖父母と別々に暮らしている家族のことです。一昔前であれば、祖父母と同じ家に住むことは普通でしたので、両親が共働きに出ていても子供の世話をしてくれる人が家にいました。これが年々核家族化することで、保育園などへの需要が急激に高まったと推測されています。
また、妊娠中や出産後の離婚数の増加という影響も大きな理由のひとつです。離婚した場合、その多くは母親側が子供を引き取ることが多いため、どうしても保育園などへの入園が必要になってきます。この場合、祖父母に面倒を見てもらう人もいますが、実際にはお母さんが一人で育てていく場合が多いようです。これには結婚によって祖父母の住んでいる場所が遠くなってしまったことや、それに伴う仕事の都合などが大きく絡んでいます。
☆これまでの対策と処置
待機児童問題の原因が調査によってある程度明らかにされてきたことにより、国や地方自治体でもようやく本格的な対策に乗り出しました。具体的には地方自治体への保育関連サービスの提供やサポートなどがメインですが、このおかげで一部の地方自治体では待機児童の数が減少傾向にあります。ただし、そうはいっても厚生労働省発表の発表によれば、平成27年現在で全国的には2万人以上の待機児童がいますので、まだこの問題の解決には時間が掛かりそうです。
▼参考:「平成 27 年 4 月の保育園等の待機児童数とその後」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000078425.pdf
政府はこの問題に対して2017年を目途に待機児童数ゼロを目指すと目標を掲げ、保育園などの受け入れ機関の増加に取り組む意向を見せていますが、なかなか改善されていないのが現状です。
▼参考:「待機児童解消加速化プラン」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/taikijidokaisho_01.pdf#search='%E5%BE%85%E6%A9%9F%E5%85%90%E7%AB%A5%E8%A7%A3%E6%B6%88%E5%8A%A0%E9%80%9F%E5%8C%96%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3'
待機児童数を減らすためには当然、受け皿となる保育園などを増やすことで解消はされますが、それ以前に大きな問題が存在しています。それは保育士への待遇の問題です。現在の保育士の賃金や労働時間では、保育士の数を増やすこと自体が難しいため、保育園で児童の世話をする人が不足するという事態が生じています。保育士は労働環境や労働条件と比較すると、賃金が安いことは以前から言われてきたことです。保育士の中には他にアルバイトをしながら保育の仕事をしている人もいるという現状があるのです。ただ単に保育士の数を増やすという処置を取れば、それは間接的に保育の質の低下につながり、別の問題を引き起こしかねません。そのため、保育園などの受け皿を拡大するためにも、まずは現在いる保育士への待遇改善が今後急がれることになるでしょう。
【関連ページ】
東京都の「待機児童解消に向けた緊急対策」に注目!!
東京都の待機児童数が2年ぶり増加!各候補の解消策は?
待機児童問題における「保育士確保プラン」の役割とその内容