保育士の採用試験では、民間・公立園を問わず筆記試験とセットで論作文が課されるケースが多くあります。書いたことが無い方にとっては尻込みをしてしまいそうですが、要点を抑えながら書けば怖くありません。今回は論作文に自信のない方向けに、問題の傾向と対策などを紹介していきます。
採用試験の応募者に論作文を課する目的は、応募者が論理的な思考を持って仕事に当たることができるか、そして保育士として適切な考えを持って仕事に当たることができるかなど文章を見て採点します。応募時の書類選考の段階や、筆記試験の一つとして書かせるケースがほとんどで、文字数としては原稿用紙1〜2.5枚分にあたる400〜1000文字くらいで出題されるケースが多いでしょう。論作文にはテーマが与えられ、その内容に沿った文章であることが求められます。また、論文と作文の違いがわからないと首をひねる方もいるでしょうが、一般的に論文は与えられたテーマ(問題)に対して自分の意見を述べて結論まで導くことができるかが問われます。一方、作文は自身の体験を元に考えや感じたことを書くものであり、論文と比べるとより柔らかい表現が求められますから、書き分けをしっかり理解した上で試験に臨みましょう。
保育士の論作文で出題されやすいテーマは、保育に関する問題提起が多いようです。例えば、論文であれば「保育士不足を解消するには」という社会問題を含んだ固めのテーマであったり「これからの保育士に求められる能力」といった実務的な問題であったりなども考えられます。一方、作文では保育士になりたい理由(志望動機)や学生(社会人)生活で学んだことなど、自身の体験を元にした文章が求められます。論作文の対策として最も効果的なのは、とにかく自分で書いて練習量をこなすこと。そして、出題されるテーマを予想して、テーマに近い内容の引き出しを持っておくことです。予想される出題テーマに対して、あらかじめ自分の論点や体験談を用意しておけば、練習で書いた内容がそのまま生きる可能性もあり本番でしどろもどろになりにくいでしょう。
文章を書く上で最も重要なのは、文章から伝わって来る応募者の「個性」です。取り分け、論理的な主張が求められる論文よりも、体験を元に書いた作文の方がより個性が求められる傾向にあります。採用側は文章の表現が上手な人を採用したいわけではありません。文章を通じて応募者の個性や主張が伝わらなければ、失格とみなされても仕方ないかもしれませんが、個性といっても変に身構える必要はないでしょう。個性は言い換えれば「自己PR」と同じであり、それは保育士になりたいという志望動機にも直結した思いであることが望ましいもの。自分が保育士に向いているのではないかと思ったエピソードや、保育士に転職したいと思ったきっかけなどを盛り込めば良いでしょう。こうした「ネタ」を事前に用意しておかなければ、試験の当日にいきなり書くのは時間的にも厳しいかもしれません。
ここまで論作文の違いや出題傾向、文章には筆者の「個性」が必要だということを紹介しました。文章を書く上でもう一つ、重要なのは「一貫性」です。途中で論点がずれてしまったり、体験談と志望動機の結びつき方が強引であったりすると不自然な文章となってしまいます。これを防ぐには、やはり何度も書いて練習するのが最も効果的でしょう。起承転結を守るのはもちろん、それぞれの段落での文字量の配分を考えながら書かなければ頭でっかちで尻すぼみな文章になりがちです。自身のあるネタを盛り込みながら、バランスの良い構成を心がけることで自分なりの「型」ができあがります。これを用意して本番の試験に臨めば、余裕を持って論作文を書くことができるでしょう。