子どもと携わる仕事をしている方にとって、子どもをどの場面で叱り、またどのように叱るのかは大きな課題といえるのではないでしょうか。どのような叱り方は避けるべきで、どのような叱り方であれば効果的なのでしょう。今回は、子どもの叱り方についてご紹介します。
子どもが間違ったことをしたときに、注意をするのか、叱るのか、判断に困るときがあるのではないでしょうか。近年では子どもを叱らずに育てるということを推奨する専門家もいます。それを方針として取り入れている家庭もあるかもしれません。しかし、集団生活で子ども達の指導者である保育士や教員などにとっては、子どもを「叱る」という行為が必要になる場面もあります。社会に出れば社会のルールがあるように、集団生活には集団生活のルールがあるということを、年齢に合わせてしっかりと子ども達に学ばせる役目があるからです。そういった面から考えると、例えば、他人を傷つける行為というのは社会に出てからも罰せられる行為です。このような時には、しっかりと叱ることが必要になってくるでしょう。
しかし、言うことをきかない子どもに、感情的に怒ってしまった後で後悔をしたという経験がある方も多いのではないでしょうか。「怒る」という行為は、子どもの気持ちを無視して自分の気持ちをぶつける「自分本位」の行為にあたります。一方で「叱る」という行為は、自分のためではなく「子供のために」という思いが根底にあります。自分の怒りをぶつける行為が「怒る」で、教育することを目的にした行為が「叱る」ということです。国語辞典では「怒る」の意味に「しかる」と記載されていますから、言語的に大きな違いはないのでしょう。しかし教育的目線でみると、捉え方が全く異なるのが一般的です。
まず、感情的になってはいけません。ついカッとなり、その勢いで子どもに接してしまいがちですが、それでは子どものためではなく自分の怒りが先になっています。一呼吸おき冷静な自分を取り戻してから、子どもと向き合うようにしましょう。
また、暴力に頼ることも間違いです。虐待は論外ですが、多少の体罰については専門家でも意見が分かれています。しかし、海外の先進国では子どもに対して手をあげてはいけないと、法律で定めている国もあります。社会の風潮から考えても、教育者という立場で体罰に頼ることは許されないと考えておきましょう。
身体的な暴力だけではなく、言葉を使った暴力も同様です。子どもの心に大きな傷を残すことがあります。悪いことをして叱ることが必要になった場合、その行為が間違っていることを教えたりその行為について否定したりしても、決して子ども自身を否定するような言葉は発してはいけません。○○することが悪いのであって、○○した子が悪いのではないという考え方を忘れずに持ちましょう。
子どもへの適切な叱り方というものは、子どもの年齢や性格によって変わってくるものです。しかし、ひとつだけ年齢や性格などに左右されないものがあります。それは、必ず「子どものために」という思いを忘れないことです。誰のためでもなく、子ども自身のために叱らなければならないのです。
そして、なるべく簡潔に済ませるようにしましょう。特に、年齢が低い子どもは長々と説明されても理解はできません。できるだけ短い言葉で大事なことを伝えるようにしましょう。
また、否定の言葉を使わない努力をすると、子どもの心に響きやすいといわれています。「○○したらダメ」ではなく「○○は危ないから、こうしよう」というように、肯定文で話をすることで、子どもは素直に聞き入れるようになります。
子どもの叱り方はとても難しいものですが、感情的にならずに子どものためを思って真剣に叱ることが最も大切なポイントです。