病院や介護施設で見かけるリハビリテーション専門職である理学療法士と作業療法士。病気や怪我で傷ついてしまった体や心のリハビリをする点では共通しています。しかし名称は漢字2文字しか違わないし、着ているユニフォームも同じだし、なんだか良く分からないという人も意外に多いかもしれません。そこで今回は、両方の仕事の内容や資格取得方法などをご紹介していきます。
病気や怪我で心身の機能・能力が低下した人に対して、自立した日常生活を送ることができるようになることを目標として、リハビリテーションを実施するのは両方の仕事に共通しています。その中でも、理学療法士は、寝返る・起きる・立つ・座る・立ち上がる・歩くなどの基本的動作の改善をサポートするのが仕事です。理学療法士が自らの体を使って筋力アップ訓練や関節可動域向上訓練を実施することもあります。また、物理療法といって、電気を使って痛みのある患部を温めたり、重りを使って固くなってしまった関節を広げたりする訓練を行うこともあります。機能・能力低下してしまった人の身体に直接アプローチして、動作の改善を促す方法を採ることが大きな特徴と言えます。
作業療法士も人の体に直接触れて関節や筋力の訓練を実施することはありますが、さらに、食事をする・着替える・排泄する・入浴するといった日常生活動作ができるようになるためのサポートをするのが仕事です。基本的な日常生活動作だけでなく、趣味活動や復職に必要な訓練をすることあります。訓練対象となる疾患に、精神疾患も含まれているのが理学療法士と異なる点です。機能・能力低下してしまった人、それぞれの人に合った作業をしてもらうことで心身ともに改善を促していく訓練を実施するのが大きな特徴です。
両方とも国家資格であり、専門の学校で3年から4年間学んで受験資格を得た上で、国家試験に合格する必要があります。全国に大学や専門学校があり、理学療法学科・作業療法学科とも、毎年数千人の学生が卒業しています。学校では、解剖学・運動学・心理学などの共通科目、理学療法概論・作業療法概論などの専門科目を学んでいきます。さらに机上の知識を学ぶだけではなく、1週間の見学実習に始まり、実際の患者さんを前にして取り組む2週間の評価実習、訓練までを担当する2ヶ月間の臨床実習を複数重ねていきます。すでに働いている先輩方が実習指導を担当しますが、コミュニケーション能力やレポート作成能力も試されることになります。資格取得後の就職先は、病院・介護老人保健施設・福祉施設など多岐にわたります。中には、臨床経験を積んで養成校の教師になったり、介護施設を開業・経営したりしている人もいます。
病気や怪我が原因で心身機能・能力が低下してしまった人が、その人らしい生活をとりもどすためには、多くの人の支援が必要です。人が元気になっていく過程を見守ることのできる理学療法士・作業療法士という職業は、非常にやりがいがあることでしょう。より良い支援をしていくためには、それぞれの専門知識を生かしながらお互いに共働・連携していくことが、とても重要になります。さらに両職種だけではなく、医師・看護師・介護士・相談員などといった他の職種とも共働・連携していくことで、一人の人の支援方法について多角的に考えることができ、より良い形での社会復帰を促すことができるのです。共働・連携していく場は同じ職場である時も、職場を越えた地域という場である時もあるでしょう。どのような職業でも同じことが言えるかもしれませんが、専門職が共働・連携することで大きな力が生まれることを忘れないようにしましょう。