栄養士と管理栄養士はそれぞれ同じ栄養に関するスペシャリストです。栄養士は栄養士免許を取得した栄養の専門家であり、管理栄養士は管理栄養士免許を取得した栄養の専門家であり、資格としての違いこそあれ栄養を扱う専門職という意味では大きな違いはありません。我々が普段口にするものについて、専門的な知識からアドバイスや指導を行うのが、栄養士ならびに管理栄養士としての共通の仕事です。しかし、定義としては一緒でも、その名称が違うように、相違点も少なからずあります。それでは管理士と管理栄養士は、どこがどのように違うのでしょうか。
両者の大きな違いの一つとして、まず資格の種類が異なります。管理士の資格は各都道府県知事によって交付される資格であり、栄養士の養成施設において2年以上の経験を積んだ末に取得することができます。一方、管理栄養士資格は厚生労働省によって認可される国家資格です。したがって、管理栄養士のための国家試験に合格して、厚生労働省における管理栄養士名簿に登録されることで初めて資格の取得が成就されます。国家資格である管理栄養士資格は、受験資格を得るために最低でも1年から3年ほどの実務経験が必要であるとされ、より取得の難易度の高い資格であると言えます。同じように食のスペシャリストでありながら、こうした資格の違いがあることによって、従事する職場や対応できる仕事の内容も少なからず変わってきます。
栄養士の仕事は主に食事の管理と栄養についての指導です。食事の管理とは、たとえば病院や福祉施設などにおいて、患者や利用者のために健康な食生活をサポートすることを言います。献立を考えたり、食材の発注や実際に調理を行ったりと、業務内容は多岐にわたります。栄養士は基本的に健康な人への栄養の管理やサポートをするのが主です。もちろん、栄養の行き届いた食事を提供するということが第一ですが、それと同時においしい食事を作るということも同じくらい要求されます。とりわけ病院においては、看護師や保健師と連携を取りながらその日の献立を考えるなど、他業種の人材とのコミュニケーションも求められるでしょう。
一方、管理栄養士は健康な人だけでなく、傷病者への対応もその業務内容に含まれます。栄養士よりも食に関する高度の専門知識が要求され、対応する個々人に合った栄養管理から栄養指導まで幅広い能力が求められます。管理士にはできない仕事も多くあり、たとえば特定の個人の身体の状況に応じた栄養管理などは管理栄養士のみに許されている仕事です。とりわけ規模の大きい病院など、食事の提供のひときわ多い施設においては、管理栄養士の雇用が義務付けられていることもあり、そういった施設に勤務する管理栄養士は部下として栄養士を指導する役割も担っています。栄養士よりもさらに食事の管理に重きが置かれている仕事内容だと理解すれば良いでしょう。
まず栄養士になるのと管理栄養士になるのとでは、資格取得までの流れやハードルがかなり違います。いずれにしても資格が必要となりますが、栄養士の資格を取得するためには大学や専門学校の栄養士養成課程を修了して卒業するだけでよく、特別な試験を受ける必要がありません。一方、管理栄養士は国家試験を受験し、かつ合格しなければなりません。しかも受験資格は栄養士の資格を持っているということなので、管理栄養士になるためにはまず国が指定する大学や専門学校などの養成施設を卒業する必要があるということです。また、管理栄養士の国家試験を受けるためには、栄養士の資格を取得したあとに国の指定施設において実務経験を1年から3年積むことが義務付けられています。管理栄養士はより専門的な業務が求められるため、資格取得のハードルも高いのです。