近年の少子高齢化は、福祉業界を取り巻く環境を一変させました。高齢者の数が増えたことによって、福祉への需要が増大する一方、福祉に携わる人材の供給が追い付かず、業界は慢性的な人材不足を抱えているという状態です。福祉に対する需要の形も多様化しており、それに伴って介護に関わる職種も多彩になってきています。今回はその中でも、介護福祉士とホームヘルパーの違いについて見てみましょう。
介護福祉士もホールヘルパーも同じ介護職の一種ですが、その中身は大きく異なっています。その違いの第一が、資格の種類の相違です。介護福祉士の資格が「国家資格」なのに対し、ホームヘルパーの資格は「認定資格」です。これは単なる資格の違いのみにとどまらず、対応できる業務内容から待遇面の問題まで、両者の間にさまざまな相違を生み出します。介護福祉士の資格を取得するためには、厚生労働省が定める福祉専門学校などを卒業するか、実務経験を積んで国家試験に合格するかの2種類があります。一方、ホームヘルパーは「認定資格」なので、厚生労働省が認定する事業所主催の介護職員初任者研修というものを修了することで所得することができる資格です。介護職員初任者研修は、合計で130時間のカリキュラムが組まれ、修了に際しては修了試験に合格する必要があります。修了試験は国家試験ではないため、各事業所によって難易度が異なるため、資格取得を検討する際は各地方の課程についてよく調べておくといいでしょう。
介護福祉士もホームヘルパーも、介護が必要な人を介助することが主な仕事です。入浴や食事、排泄、着替えなどのサポートをするのが基本であり、現場で活動するうえではそれほど大きな違いは感じないかもしれません。ただ、介護福祉士はケアワーカーと呼ばれる現場の責任者になって、介護士の人材配置や介護の指導などをする立場になることができます。一方、ホームヘルパーはケアワーカーから指導を受ける立場であるため、現場で実務を行うということが多いところに特徴があります。こうした違いは待遇面での差を生み、現場の責任者にもなれる介護福祉士は雇用的にも優遇されることが少なくありません。一方、ホームヘルパーはパートタイムでの雇用もよくあり、待遇面では決して恵まれているわけではないので、近年ではホームヘルパーからのキャリアアップを目的として介護福祉士の資格取得を考えるという人も多くなっています。
今後はますます高齢化が進むと考えられていますが、それに比例する形で介護や福祉に対する需要も増大すると予想することができます。とりわけ介護福祉士はケアマネージャーとして現場において責任ある立場につくことができるため、多くの介護施設において重宝される存在になるだろうと考えられます。一方、ホームヘルパーも介護の現場においては欠かせない人材です。福祉への需要が今後も進めば、その需要を補うだけの供給がなくてはなりません。認定資格であるホームヘルパーは、資格を取得すること自体はそれほど困難ではないため、現場で実際に要介護者をサポートする人材としてとても重要な役割を担っています。ステップアップのために介護福祉士の資格を取得するホームヘルパーも増えていますが、法令の変更などによって介護業界においては特に現場での実務経験を重視する傾向が高まっているため、ホームヘルパーとして経験を積みながら将来的にキャリアアップを目指すという道を探ってみても良いかもしれません。いずれにしても、介護への需要は高齢化が進行するほどに増大することが見込まれるため、社会全体を見ても介護業界への期待度は高まっていると言えるでしょう。