乳幼児を相手に仕事をする保育士。1日の大半を子供たちと一緒に過ごし、いつも笑顔で子供たちに接する様子は、さわやかで優しい先生のイメージがありますよね。
しかしそんな保育士さんたちも、職場での「人間関係」に疲れていることが多いようです。女性だらけの職場、要望をたくさん伝えてくる保護者、保育士さんたちの悩みは、今や子供たちより大人の人間関係の問題かもしれません。
保育士不足が深刻に叫ばれている現在、「潜在保育士」と呼ばれる人の雇用を行おうと、各自治体も積極的に動き出しています。
潜在保育士は全国で約68万人いると推計されており、昔は保育園で働いていたが、結婚や出産を機に辞めてしまった人がそのように呼ばれています。
今の保育園ではパート社員として潜在保育士がたくさん活躍しており、昔の経験はもちろん、自分の子育て経験を生かした労働力はとても頼りになり先生としても好評のようです。
しかしその一方、正社員として働く保育士は「新卒」の若い先生が多く、保育経験も少ないのが現状です。
そのため通常の会社では正社員がパート社員へ指示を出して動くことが多いのですが、年齢の若い正社員の保育士が、経験のある年配のパート保育士に指示を出しにくいといった問題があります。また経験のあるパート保育士も、もっとこうしたら良いのにと思いつつ、若い保育士にアドバイスをしにくい雰囲気もあるようです。
言いたいことが言えない、自分の後輩なのに年配の先生…。こうした関係が自分の要望を伝えにくく、つい陰口を叩いたり、先生同士の派閥を生んだり、難しい上下関係に悩む保育士は少なくないようです。
子供を育てる環境が孤立している現代、様々な悩みや愚痴を保育士にぶつけてくる保護者も少なくありません。
昔は「離乳食の作り方」や「夜泣きの対処法」といった悩みが多かったのですが、最近では「あの子と遊ばせないで欲しい」「保育園内に監視モニターを設置してほしい」など、子供の相談というより親の要望や不満をぶつけてくる保護者が増えています。
また保育園で起きる事故をメディアがたくさん取り上げることもあり、子供にちいさな擦り傷をさせてしまっただけでも、親が「虐待」を疑って信頼関係が崩れてしまうようなケースもあります。多くの保護者は協力的ですが、クレーマーと呼ばれる保護者がいる園では、保育士は常に保護者の目を伺ってビクビクしながら仕事をするケースもあるようです。
こうしてみると、保育士の仕事はとても人間関係が難しいことが分かります。
しかし保育士の仕事はあくまで「子供を大切に預かること」。そのためある程度の割り切りは必要になります。例えば職場で他の保育士に指示を出すことで雰囲気が悪くなっても、子供のためだと思えば割り切って指示もだせるかもしれません。また人間関係の問題はつい仕事が終わった後でも引きずってしまうことが多いのですが、保育園を出たら保育士ではなく、自分という人間に切り替えることも大切です。保育士同士の過度な交流は避け、仕事を忘れられるような趣味や仲間を持つことも大切でしょう。
また要望を伝えてくる保護者の多くは「誰かに話を聞いてほしい」といった気持ちが強いのです。実際に要望を飲む事ができなくても、真剣に耳を貸すことで「この先生は話を聞いてくれる」という満足感を得ることはできます。保護者のクレームや自分への評価も気になりますが、一生懸命子供と向き合うことで子供が自分を好きになり、結果的に保護者からの評価も得ることができるのです