理学療法士は、病気や事故などによって体が不自由になった人のリハビリテーションを行います。理学療法を用いて、日常生活や仕事に復帰するのをサポートするのです。基本的な動作を行う能力を回復させることにより、自立して生きられるようにするのが目的です。また、精神面のケアも理学療法士の重要な役割のひとつです。体が不自由になったショックを緩和し、積極的にリハビリテーションに取り組むように導きます。
今回は、理学療法士になる方法や必要なスキルなどについて紹介します。
理学療法士になるには、理学療法士の国家試験に合格しなければなりません。試験は「理学療法士及び作業療法士法」という法律に基づいて、厚生労働省の医局が監修しています。
試験内容は筆記試験と口述試験、実技試験の3つです。筆記試験は東京都や大阪など、8つの都道府県で行われます。口述試験と実技試験は筆記試験の後日、合格者だけが東京で受けることになっています。すべての試験に合格すると理学療法士として働くための資格が付与されるのです。毎年3月末に合格者が発表されます。
また、理学療法士より専門性が高い「認定理学療法士」や「専門理学療法士」という資格もありますが、取得していなくても理学療法士として働けます。理学療法士がステップアップのために取得することが多いです。
理学療法士を目指すなら、国家試験を受けための要件を満たす必要があります。高校を卒業後、厚生労働省や文部科学省が定める養成機関で勉強しなければなりません。基本的には理学療法士課程が用意されている大学や専門学校などに進学して、3年以上学ぶことになります。臨床心理学や解剖学など、学ぶ科目は多岐にわたるので、勉強に対する熱心な姿勢が必要です。理学療法士と類似点の多い作業療法士の資格を持っている場合は、これらの科目の単位が部分的に免除される制度があります。
勉強だけではなく、実習にも参加する必要があります。実習では病院やリハビリ施設に行って、理学療法士の仕事を体験します。患者に対して理学療法の計画し、それに基づいて治療を行っていくのです。現役の理学療法士の指導を受けながら、実践的なスキルを学びます。通常は最終年に2カ月ほどかけて行うことが多いです。実習を終えて、必要な単位をすべて修得できれば、国家試験を受ける要件を満たしたことになります。
理学療法士の仕事にはさまざまな面があるので、必要な素養やスキルが少なくありません。体が不自由になった人は急に回復することはありません。そのため、回復が見られなくても諦めない不屈の精神が必要です。患者は諦めたり投げやりになったりすることがあります。その場合も、腹を立てずに誠意をもって対応する懐の広さが重要です。
ある程度の回復で患者が満足しても、さらに回復の見込みがあるなら挑戦を促さなければなりません。常に向上心を持って仕事をする必要があるのです。そのためには、患者の体を自分の体のように考え、回復の喜びを共有できる感性も大切であるといえます。また、これらを実現するために高いコミュニケーション能力や体力も求められます。
自分が担当した患者が回復し、日常生活や仕事に復帰することに大きな喜びを感じるでしょう。体が不自由になって絶望していた患者が、明るい人生を取り戻せるのは素晴らしいことです。その支援を行える理学療法士の仕事は、とても重要であるといえるでしょう。それだけ理学療法士の責任やプレッシャーも大きいですが、困っている人の役に立ちたい人にとっては非常にやりがいのある職業です。
また、理学療法の分野は常に研究されており、進歩し続けています。勉強し続ける向上心を持っていれば、いつでも新しいことを吸収できるのです。自分の知識やスキルが増えて、患者に対して行えるアプローチが増えていくことに充実感を覚える人も多いでしょう。